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第5章「マイ・ウエイ」へのシナトラの軌跡(4)1960年代、栄光に陰りが

  1964 年の正月、私は高校受験の勉強をしながら、いつものように FEN (極東放送)に耳を傾けていた。なかでも、金曜夜 8 時半から放送される ビルボード・トップ 10 は、アメリカの最新ヒット曲を知ることができる貴重な番組で、毎週欠かさず聴いていた。 ところが、その日は思いもよらない異変が起きた。先週までランキングに姿すら見せなかった聞き覚えのない曲が、なんと 1 位から 3 位までを独占していたのである。しかも、アナウンスではグループ名が「ビールビール」と聞こえる。いったい何が起こったのかと必死に耳を澄ませた結果、ようやく 1 位の曲が I Wanna Hold Your Hand 、歌っているのは ビートルズ だと聞き取れた。 2 位は She Loves You 、 3 位は Please Please Me であった。 この突然の出来事が、後にフランク・シナトラらが象徴していた 伝統的ポピュラー音楽 の時代を大きく揺るがし、世界的な音楽潮流の転換点となるとは、当時の私には想像すらできなかったのである。   1960 年代のフランク・シナトラは、まさに“帝王”の名にふさわしい絶頂期を迎えていた。自身のレーベルである Reprise を設立したことで、創作活動の自由度は飛躍的に高まり、この 10 年間を通じて多彩な音楽的挑戦を次々と展開していく。 以下に示すのは、 1960 年代に発表されたアルバムと、その 楽曲クレジット に基づく一覧である。ただし、この時代のクレジット表記には不備や不正確な点が少なくないため、一部には推測による補足を含んでいる。 参考資料: FRANK SINATRA DIGITAL — Reprise / Capitol Catalog MKT (C92), Capitol Records 1960 年 2 月、フランク・シナトラはロサンゼルスで自身のレーベル、 リプリーズ・レコード を設立した。これは、キャピトル( EMI )との 原盤所有権 をめぐる対立が決定的となり、創作上の自由を求めたシナトラが独立を選んだ結果である。ただし、キャピトルとの契約にはまだ残存期間があり、未発表アルバム 3 作の処理が必要だった。そのため、リプリーズからの実質的な第 1 弾...